あをぐみがデザインを担当した「旧山辺学校校舎」のリーフレットをご紹介します。
2026-03-20
旧山辺学校校舎のリーフレット
2026-03-14
シアターランポンのテリヤキ
彼らの新作『テリヤキ』が、2026年3月16日まで上演されていて、あをぐみも観劇してきました。そして、「テリヤキ」美味しかったから、おかわりしちゃいました。
というのも今回は、キャスト違いの「A」と「B」という出演者がガラリと変わるユニークな趣向があったのです。これはもう両方とも観るしかないでしょう。
演劇のWキャストって、理想とする完成形「A」をいつどこでもどんな状況でも安定して上演できるように、完成形「A」に限りなく近い「A’」を複数用意するのが、演劇システムとしての常套なのかな、と思ってました。(万が一のため主役に代役をたてる、とか)。
そのシステムを逆手にとったのか、今回の『テリヤキ』ではキャストによって演出やセリフがところどころ変えてある。
それによって「A’」というよりは、「A」と「B」という似たようで違う2つの世界があるように感じました。
「A」と「B」は平行世界なのかもしれない・・・というような。
最終的に、会場を茅野市に移しての「C」も用意されてるから、「C」の平行世界が「A」と「B」なのか、はたまたすべてが平行世界で本当の世界はお芝居の外にあるのか・・・そんな妄想が膨らんだりして、いやいや考えすぎか。
細かいことは考えずとも、ただただ身をゆだねてバクショーして「ああ、たのしかった」と満腹になって家路につけるような『テリヤキ』です。
松本にある「ランポンシアター」での残りの公演には売り切れ回もあるようですが、3月28、29日に茅野市民館マルチホールで「C」キャストの公演があります。
見逃した方、まだまだ「テリヤキ」食べ尽くしたい方は、そちらへも足を運んでみては。
そのさいには、あをぐみがお手伝いした新作グッズもご覧いただき、購入していただけるとうれしいです。ランポンの若手が考案した、なかなかに魅力的なグッズ。自分たちでデザインしたくせに、つい欲しくなっちゃうものが多々でした。(äwö)
2026-03-10
ゴリラのはなくそ
あをぐみがデザインを担当した絵本、『ゴリラのはなくそ』(あすなろ書房)をご紹介します。
文章、たなかなおとさん。絵、ほりかわりまこさん。
ある日のこと、一通のメールがやってきました。
「ゴリラのはなくそのデザインをお願いしたい」。
え? どーいうこと?!?!?!?!?!?!?!
まったく内容が想像できない依頼でしたから、おもしろいに決まってる。
見逃す手なんてありません。二つ返事で仲間に加えていただきました。
実はこれ、読み聞かせを前提にした絵本なのです。
そのため、読むだけでなく「聞かせる」ことをいつも以上に意識してデザインをしています。
余白をとってスッキリさせつつも、単調にはならないような変化をつけたり。
そして最大の難関は「品のあるはなくそ」に仕上げること!
あーでもない、こーでもない、たしたりひいたり、みんなでアイデアを出しあって、ようやくできあがりました、『ゴリラのはなくそ』。
どんな絵本になったのか…… 書店で見つけたら、はずかしがらず、まずはぜひタイトルを声を出して読んでみてください。(ä)
2026-03-09
松本献血ルームのグラフィック
もともと旧松本パルコのど真ん前にあった長野県赤十字血液センター・松本献血ルーム。
2025年11月に、すぐ裏手となる五幸セントラルパーキングプラザビル1階へと移転しました。
その新ルーム内部の壁面と天井のグラフィック・デザインを、あをぐみが担当しました。
松本から見える山並みを忠実に再現しつつ、献血の間の時間を少しでもリラックスしていただくべく、デザインとして軽やかに仕上げています。
特にトイレに至る廊下の壁面には、ちょっとした仕掛けも施されていますので、献血ついでに天井と壁面にも注目いただけるとうれしいです。(äwö)
2026-02-28
別冊太陽 新版 太宰治
かれこれ17年も前になりますが、生誕100年の節目に別冊太陽『太宰治』が発売されました。
そのエディトリアルデザインは ä が担当していたのですが、当時「あをぐみ」はまだ設立されておらず、ä は松本ではなく東京暮らしでした。
で、この2026年。新たに発見された「雀」の原稿などを加えて再編集した『新版 太宰治』(別冊太陽 日本のこころ 330/平凡社刊)が発行されたのですが、そのエディトリアルデザインは、あをぐみとしての ä が担当しております。
17年前の自分と共同作業するのは、何とも不思議な気分……。
新たな発見もあれば、太宰ゆかりの三鷹の跨線人道橋のように、今は失われてしまったものもあります。
今回の誌面では、17年前に撮影していただいたその橋の写真を、目次に印象的にあしらいました。
ちなみに人道橋は一部が記念碑的に保存されることとなり、ポケットスペースなる場所に整備されていくようです。
太宰ファンもこれから太宰治を知る方も、本書をナビとしてより深く太宰とその作品世界をお楽しみいただければうれしいです。(ä)
2025-12-27
藤田嗣治というひと
2026年は藤田嗣治生誕140年ということで、今年から来年にかけて、さまざまな藤田展が各地で行われています。
こちらの特設サイトに展覧会がまとまっているので、気になる方はぜひチェックを。
あをぐみöもせっせと出かけ、特設サイトに掲載されている展覧会は全部見てきました。
どの展覧会でも“見知らぬ藤田”に出会えて興味深かった。
いろいろ見たことで、自分のなかの藤田イメージが「フランス暮らしのFOUJITA → 明治生まれの江戸っ子」に置き換わった気がします。
個人的興味からさまざまな藤田展を巡っていたのですが、思いがけず記事を書くことになりまして、さらに深く藤田を調べる機会に恵まれました。
おかっぱ丸メガネで奇抜なファッションをまとった、“いわゆる陽の当たる藤田”のイメージは、1920年代半ばまでの画壇の寵児たる時代に集中しています。でも実はその時期を超えた40代から晩年までの藤田に、人間藤田の滋味がしみだしているのだなあとつくづく。
それをまとめた記事が、現在発売中の『エクラ』2026年2・3月号に掲載されています。
ご覧いただければ、とっても嬉しいです。(ö)
2025-11-24
クリスマスのくつした
早いもので、今年もあと1ヶ月と少しになりました。
一気に年末感が増す昨今に、ぴったりの本をご紹介します。
あをぐみがデザインを担当した絵本『クリスマスのくつした』(のら書店)です。
イギリスの作家エリナー・ファージョンさんの詩を、石津ちひろさんの訳、ほりかわりまこさんの絵で仕立てたこの絵本、過去に手がけてきたデザインの中でも、最上位のかわいい仕上がりです。
かわいいだけじゃなく、「え! そうきます?!」という驚きの仕掛けもちりばめられていて、何度も楽しめる一冊です。
この本をデザインするに当たって、あるキーワードが思い浮かんでいました。
制作チームの誰にも伝えていない、まったく個人的に掲げたそのキーワードとは……“ゴスロリ”です。
最初に受け取ったラフ案から“ゴス”な空気を感じとった僕のあたまのなかには、The Cure の楽曲が響いてきました。
「これは掲示のひとつだ」と思いましたが、誰にも伝えず、その響きから感じる空気をデザインに落とし込んでいったのです。
まるで、“美意識”をだいじにだいじに、ひとつひとつの箱へしまっていくような感覚でした。
たくさんの子どもたちが、クリスマスまでの日々を楽しめるようデザインする一方、ゴスロリのおじいちゃまがお孫さんに、この絵本を読み聞かせているような場面を想像したりして。
心のどこかでゴスロリたちにも楽しんでもらいたいな、とこっそり思っていました。
クリスマスまでの日々、あたたかくして、この絵本をおともにお過ごしいただければさいわいです。
クリスマスがおわっても、また来年のクリスマス近くになったら開いて、そしてその次も。
いつまでも長〜くお楽しみいただけます(ä)。
2025-11-04
アール・デコ100年
1925年にパリで開かれた通称”アール・デコ博”から、今年で100年。
この機に東京や大阪でいくつかの展覧会が開催中なので、まわってまいりました。
なぜって、この本をあをぐみが担当したからです。
東京美術刊の「もっと知りたいアール・デコ」。
著者はお茶の水女子大学名誉教授の天野知香さんです。
10月末に発売されたので、ぜひ書店などでお手にとっていただきたく。
本を読めば、”アール・デコの正体”がつかめるような内容になっています。
さらに各地で開催中の展覧会を見れば、実物の迫力や手触りを目の当たりにできるので、アール・デコ理解がより進むこと間違いなし。
というわけでまずは東京へ。
現在(2025年11月時点)開催中の関連展のなかでも、アール・デコを建物ごと楽しめてしまうのが、東京都庭園美術館の「永遠なる瞬間 ヴァン クリーフ&アーペル —ハイジュエリーが語るアール・デコ」展です。
こんなふうにハイジュエリーとその原画が並んでいたり、
館のインテリアごと雰囲気を味わえたりできるのです。
書籍の表紙に使った階段の意匠も、間近で見ると手仕事の確かさがわかりますね〜。
ちなみに「もっと知りたいアール・デコ」に掲載のコラムでは、アール・デコの館と呼ばれるこの美術館の建物について同美術館の勝田琴絵さんにご執筆いただきました。
ご一読のうえで訪れると、解像度がぐっとあがって見えますよ。
展示は2026年1月18日まで。
お次は大阪へ移動しましょう。
大阪中之島美術館では、こちらの「新時代のヴィーナス!アール・デコ100年展」が開かれています。
「アール・デコと女性」をテーマにしているだけあって、ジュエリーや香水瓶、ドレスなどのファション関連品が多々。
女性が乗りこなすようになった車や、旅行に誘うポスターなどもあり、おしゃれしてアクティブに出かけたい気分になります。
もう終わっちゃいましたが、この展覧会の開催直後には、「もっと知りたいアール・デコ」著者の天野さんによるトークが開かれました。
こちらの会期は2026年1月4日まで。
さいごに東京に戻ります。
三菱一号館美術館で開催中の、「アール・デコとモード 京都服飾文化研究財団(KCI)コレクションを中心に」展です。
2022年にあをぐみが担当したこちらの書籍に掲載されている作品もあって、なつかしさが込み上げます。
上の赤いシャネルのドレスは、目次にも使いました。
「もっと知りたいアール・デコ」 の表紙にもいる、ポンポンのクマさんのミニ版も見られました。
書籍内で紹介したいくつかの工芸品なども、実際に会場で見ることができました。
こちらは2026年1月25日まで。
3つまわると、アール・デコが立体的かつ体験的に理解できるのでおすすめ。
秋〜冬のアート旅にいかがでしょうか?(ö)
2025-07-17
いま、日本は戦争をしている −太平洋戦争のときの子どもたち−
あをぐみがデザインを担当した絵本『いま、日本は戦争をしている −太平洋戦争のときの子どもたち−』(小峰書店)をご紹介します。
絵と文は、堀川理万子さん。
かがくのとも(福音館書店)の『さんかくで いえを つくろう』や『そっちから わたし、どんなふうに みえている?』に続き、堀川さんの本のデザインを担当するのは3冊目となりました。
「戦争」というテーマに向き合うことは、個人的に「人生の宿題」のような気がしていたので、ここで大きなチャンスをいただけたことに、運命的なものを感じています。
デザインに取り掛かる前に、äも取材に同行して体験談を直に聞くことができました。
インタビューだけでも大仕事なのですが、堀川さんは同時にイラストのラフと、そこに添える文章さえも平行して書いていくのです。しかもそれを数日くりかえして精度をあげていく……そのスピードと集中力には驚愕しました。
取材を終えてから、それらをもとに本格的にイラストを仕上げていくのですが、ある程度仕上がった段階で取材先に確認し、修正をくりかえす。
これは相当な覚悟とエネルギーが必要だった思います。
完成したイラストには、写真とはまた違った趣きが添えられ、戦時下でのほんとうの日常が封じ込められているように僕には見えました。
たったひとりの方への取材でもたいへんなのに、17人の方と向き合った。
結果、完成した本もおのずと大作になっています。
子どもたちはもちろん、すべての人に読んでもらいたい、と強く感じています。
原画展も開催されるので、リンク先からスケジュールを確認いただき、ぜひ足をお運びください。本の外側が感じられる貴重な機会です。(ä)
2025-06-04
今宵からまた、あのランプがオンします
本日から6月16日までの短い期間、
夜の帳が下りる頃にあのランプが煌々と輝きはじめます。
……そう、シアターランポンです。
さあ、ランポンシアターの扉を開けましょう。
今宵こちらで繰り広げられるのは、カレル・チャペック原作のロボットのおはなし。
扉の先はユートピアか、はたまたデストピアか。
ご自身の目で確かめてみてください。
本公演をイメージした、オリジナルバッジなどの販売もあります。
今回もバッヂデザインをあをぐみが担当しましたので、ぜひご注目くださいまし。(äwö)
2025-06-03
ゴッホという名の現象
先日、カーサブルータスのためにこちらの告知記事を書いたので、遅ればせながらポーラ美術館へ。
展覧会の内容はぜひ記事をお読みいただきたいのだけれど、実見して思ったのは、この展覧会が、学芸員の方の細にわたる研究の賜物なのだなあということ。たくさんの文献や資料にあたったことが、展覧会全体を歩くとよ〜くわかりますが、だからといって説明的ではなく、ゴッホがどう受け止められてきたのかが、自然とクリアに見えてきます。
燃えてしまった幻の《向日葵》(通称、芦屋のひまわり)や、“贋作”についての話なんかも、興味深く見ることができました。
ゴッホ受容の歴史は今に至るまで続いており、本展でも現代美術作品がいくつか見られました。
先の”贋作”にまつわる福田美蘭さんの作品もおもしろかったな〜。アートの真贋や”信仰心”に似た心理などなど、考えさせられること多々。
そして森村泰昌さん。彼がこれまで創作してきたゴッホにまつわる作品は、映像作品も含めて全部で6点あるのだけど、そのすべてがここで見られます。レア機会だ!
本人もおられました。レア機会だ!!
2025-04-14
望月桂 自由を扶くひと@原爆の図 丸木美術館
2025年4月5日(土)から『原爆の図 丸木美術館』(埼玉)でスタートした展覧会「望月桂 自由を扶くひと」。
本展のフライヤーとポスター、展覧会ZINE(限定部数ゆえ先着順配布ですが、なんと無料!)のデザインを担当しました。
共催に“安曇野市教育委員会”とあるのでお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、望月桂は長野県安曇野市に生まれ、あをぐみが拠点を置く松本市とも縁のある人物(松本の高校で美術教員をしていました)。
アナキストとして知られますが、美術の文脈ではほとんど注目されてきませんでした。
この展覧会は、企画担当の足立元さんが代表を務める「望月桂調査団」によって実現したもので、芸術家としての望月の活動に光を当て、彼自身とその周辺を掘り下げる野心的な内容となっています。
デザインをするにあたり、あをぐみäも作品の移送に参加してみましたが、活動にかけるメンバーの情熱のすさまじさを目の当たりにして思わず姿勢を正しました。
フライヤーやポスターでは、望月の絵画作品を全面に押し出すこと、美術家・風間サチコさんの手による展覧会ロゴを効果的に見せること、そしてこの2つをうまくつなぎながら、展覧会自体の世界観を印象的にデザインすることが、自分の役目となりました。
3種のメディアに使う紙を統一し、本来なら破棄されてしまう廃インクを調合・利用して、一風変わった質感と色味の印刷を実現。独自の世界を表現しています。
会期中の5月17日(土)には、調査団によるシンポジウム「望月桂を探求する」、5月31日(土)には調査団代表の足立元さんとライターの武田砂鉄さんによる対談「望月桂を発見する」が開催予定。
どんな話が飛び出すのか、楽しみが募ります。
この展覧会をきっかけに望月桂が多くの人に知られ、さらに情報が集まって理解が進んでいくことになるのでは、と期待大。
膨大な資料がまだ残されていることもあり、会期中も会期後も「調査団」のさらなる活動は続きます。
会期は、7月6日(日)まで。ぜひ足をお運びください!(ä)
2025-02-23
『そっちから わたし、どんなふうに みえている?』(かがくのとも 2025年3月号)
あをぐみがデザインを担当した『そっちから わたし、どんなふうに みえている?』(かがくのとも 2025年3月号)をご紹介します。
『さんかくで いえを つくろう』、『ならべかえ -ましかくの へんしん-』と続いて絵本をデザインするのはこれで3冊目。
「▲」「■」ときたから今回は「●」・・・ではなく、「見てるわたし」と「見えているわたし」が交互に描かれることで、わたしの立ち位置を見つめなおせるような絵本です。
文は越智典子さん、絵は堀川理万子さん。
文章が添えてある見開きと絵だけの見開きが繰りかえされるのですが、このリズムによって、深く文章に向き合えるというか、深呼吸するように絵の余韻を味わうことができる気がします。ページ数に収まらない大きさの情報量があるなあ・・・とデザインしながら感嘆しました。
僕にも、子どものころから現在までずーっと手元に残っているたいせつな絵本がありますが、この絵本も誰かにとっての「それ」になる絵本だと思います。
「かがくのとも」は月刊誌なので、書店で手に取れる時間も残りわずか。気になる方はぜひお近くの書店へダッシュで! とはいえ、バックナンバーをあつかっている本屋さんもありますので、ぜひ探してみてください。
あなたも表紙のあの子と目があいますように。(ä)
2025-01-19
その日私はそこにいなかった
先日亡くなられた谷川俊太郎さんの「その日」は、広島に原子爆弾が投下された8月6日を詠んだ詩。
だけど、öにとっては30年前の1月17日に重なる。
その日私はそこにいなかった
確かに「そこ」にはいなかったけれど、遠く離れた港町・横浜で呆然とTVの画面を眺めていたことは鮮明に覚えている。その後すぐ、通っていた学校が募集していた「災害ボランティア隊」なるものに手を挙げ、生まれて初めて神戸の地に足を踏み入れた。それまでのイメージでは、キラキラしておしゃれで素敵だった港町・神戸に。
学校の派遣は1週間足らずだったので、その後すぐにUターン。累計で3ヶ月ほどを神戸市長田区の中学校で過ごした。仲良くなった人もいた。
えっちゃんは埼玉在住の演劇人。
数年後に見に行った舞台は、東京・中野の廃映画館で上演されていて、瓦礫を踏み分けながら客席に着いたら、舞台上に出てきた男がキムチを頭から被ったので、劇場中が強烈な匂いで充満。「げーる・でぃすこー♪」というノリノリの歌とともに踊るえっちゃん。歌にのって変なゲル状のものがばら撒かれ、足を滑らせるのではないかとヒヤヒヤしながら建物を出たら、うっすらと月が出ていたのを覚えている。
うしやまくんは、本名は全然「うしやま」じゃないのに、なぜかそう呼ばれていた。
神戸を後にする時、青春18きっぷで途方もなく長い寄り道をして帰ったのだけど、道中に訪れた彼の実家で会ったお父さんはボディビルダーで、茶の間でムキムキの上半身を披露してくれた。ボディビルダーを生で見た最初で最後の経験。
長尾のおっちゃんは、家が被災したので家族みんなで校庭のテントに暮らしていた。
いかにも元ヤンなおやじで、エアブラシで椰子の木とかが描かれたミニバンに乗っていて、カーステレオからはいつも「セクシャルバイオレットNo.1」か「悲しい色やねん」が流れていた。
一度、長尾のおっちゃんが「おまえらよう働いとるから」といってご褒美に、ハーバーランドに連れて行ってくれた。
えっちゃんも牛山くんもわたしも、配給品の作業服の分厚い上着を着ていて、わたしにいたっては、どこかの県の人が炊き出し用にとプレゼントしてくれたマグロを捌いた時の返り血がべったりついているし、えっちゃんもうしやまくんも、焚き火で袖や裾が焦げていてひどい有様。おまけに4人ともまともに風呂に入っておらず、髪がレゲエ状態。
そんななナリで訪れた夜の港は、本当に輝いていた。神戸の底力を見せようと、既にライトアップが復活。ミニスカート、ブーツ、巻き髪のおしゃれな神戸ギャルたちが、いかした彼とデートを楽しんでいて、その光景があまりにキラキラしていたので、小汚い我々は何だか感動してしまった。
もういっかい谷川さんの詩。
その日私はそこにいなかった
私はただ信じるしかない
怒りと痛みと悲しみの土壌にも
喜びは芽生えると
(後略)
あの日から30年。久しぶりに訪れた神戸の中学校は、確かにここだ、ということはわかるものの、周りがあまりにも変わっていて、狐につままれたように立ち尽くした。でも少し歩くと、ああ、こうだったかも、というところにも出合えてホッとする。
「いかなごのくぎに」を送ってくれた横井のおばちゃんは元気だろうか? けーすけちゃん(犬/雌)はもう生きていないかもしれないな。
震災復興の文化的シンボルとして2002年に開館した兵庫県立美術館を見上げる。カエルが嗤っていた。
ここでも今、30年をひもとく展覧会が行われている。(ö)
2024-12-06
大河ドラマをもっと面白がるための一冊
10月のはじめに行われた、松本市図書館のイベント「ライブラリレー」。
図書館のイベントなので、本に関係のある人がリレー形式でトークをしていくわけですが、この回ではあをぐみöが、“編集者”という立場からお話をいたしました。
題して「編集という仕事。あるいは大河ドラマをもっと面白く見る方法」。
なぜここに大河ドラマが出てくるのかというと、『光る君』の次となる大河の主人公が、“編集者の祖”ともいえる蔦屋重三郎だからです。編集者の仕事を、江戸時代の蔦重をとおしてご説明する、というのがテーマの意図なのですが、とはいえ、寄らば大樹の陰ならぬ大河の陰とばかりに、蔦重をもちだしてくるとはポピュリストめ、と思いますよね。でも蔦重にフォーカスしたのには、ちゃーんと理由があるのだ。öがその頃ちょうど、この本を編集していたからです。
東京美術から先日刊行されたばかりの書籍『もっと知りたい蔦屋重三郎 錦絵黄金期の立役者』。
著者は千葉市美術館の副館長をご退館されたばかりの田辺昌子さんです。(デザインはあをぐみäが担当)
この本を読むと、今も昔も編集者の仕事内容はほとんど変わりがないのねえ、とつくづく。道具が筆からガジェットに変わったのは大きな変化かもしれませんが、中身はほぼ同じ。「ライブラリレー」でも、そうした編集者今昔物語的なお話をさせていただきました。
この本には、蔦重がどのような人物で、まわりにどんな人がいて、どういった仕事を成し遂げたのかが非常にわかりやすく紐解かれているので、読めば大河ドラマがより一層臨場感をもって楽しめること間違いなし。我々も1月の放送スタートまでにもう一度読み直そうと思います。(ö)

































