2023-05-15

シアターランポンのロゴ

松本市を拠点に活動をはじめたあたらしい劇団「シアターランポン/theatre LAMPON」のロゴ・デザインを、あをぐみが担当させていただきました。

ロゴは、劇団を象徴する大切な存在です。さらには、これから彼らに興味をもち、応援してくださる未来のファンのアイコンにもなるし、もっと言えば、シアターランポンといっしょに松本の演劇を盛りあげるムーブメントの旗印にもなりえる……。つまり、劇団をめぐるたくさんの人の”北極星”たる存在なわけです。それをデザインするなんて、たいへん光栄なこと。あをぐみも気合いが入リました。


メンバーに集まってもらい、松本に軸足を置いて演劇を続けていく理由など、あれこれヒアリング。そのなかで、彼らの演劇に対するまっすぐな想いと、そうは言ってもどこかふざけたいという子どもみたいな気持ちなど、独特のセンス&ユーモアをビシビシ感じました。そんなこんなを大事にもち帰り、あーでもないこーでもないと模索して、このロゴのデザインに至ったわけです。


彼らのサイトに、あをぐみによるロゴについてのことばも掲載されていますので、興味がある方はそちらにも目を通していただければさいわいです。


今後のシアターランポンの活躍、と〜っても楽しみです。(äwö)

2023-02-22

マリー・ローランサンとモード@Bunkamura ザ・ミュージアム

先日、東京美術刊のローランサン本についてお知らせしましたが、現在、渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムでは、ローランサンと同時代のパリモードにフォーカスした展覧会が開催中です。


書籍でも紹介した作品もたくさん出ていますが、本物を近距離で見られる感慨〜。繊細さと大胆さが同居する筆致にマリーの人柄をみたり。


展覧会には、当時のパリモードがどんな人たちに牽引されていたかなど、興味深い資料も多々見られます。同じくあをぐみが手がけた東京美術刊のシャネル本に詳細が記されていますが、ギャルソンヌと呼ばれる颯爽とした女性たちが、人々を街をそして社会を振り向かせていた時代。


マリーもまたファッションに大いに興味があった人で、シャネルの店の顧客だったし、“モードのスルタン(王様)”と呼ばれたポール・ポワレの妹(彼女もデザイナー)は大親友。自身でバレエの衣装デザインもしました(これがまた、見事に絵画作品のイメージどおり)。


初日には『もっとローランサン』本の著者で、マリー・ローランサン美術館館長の吉澤さん(中央)が、マリーの紹介をしていました。奥にいらっしゃるのは、同展のファッション監修をした成実弘至さん。お二人の話が相互に補い合い、当時のパリが立体的に見えてきた気がします。


そうそう、ミュージアムショップではカタログとともに、我らが『もっとローランサン』も販売されています。


おー、『もっとシャネル』もある。


この展覧会がおわると、Bunkamura ザ・ミュージアムは長期休館に入ります。もうすでに東急百貨店本店もクローズしていたし、これでまた渋谷の街並みが変わることになるわけです。楽しみなような寂しいような。


会期は4月9日まで。(ö)


追記:あの人もローランサン展、応援してくれているみたいです。

2023-02-17

もっと知りたいローランサン

あをぐみが編集とエディトリアルデザインを担当した『もっと知りたいローランサン』(東京美術刊)が発売中です。



昨年担当した『もっと知りたいシャネルと20世紀モード』に続いて、シャネルと同じ年に生まれ、同じ街(パリ)で大きく活躍した女性画家、ローランサンを手掛けることができたのは、とても幸運でした。ここのところ、20世紀はじめに活躍した女性たちが取りあげられる機会が増えているのは、「いま、この時代だからこそ」の大きな流れがあるように感じます。


ふわっとした印象の絵が多いので、ほっこりした画家のように思われていそうですが、彼女の言動を紐解くとむしろ「カッコいい!」とさえ感じます。そして同時にユーモアにもあふれてる。

同時代や後進の画家、作家たちに大きな影響を与えたのは、その独特な絵画表現によるものだけではなく、ローランサン自身の人柄も大きいのかも。


現在、東京・Bunkamura では「マリー・ローランサンとモード 」展も開催中。本書をガイドブックとして携えつつ足を運んで、彼女の絵とその時代の空気をも、楽しんでみてはいかがでしょう。(äwö)

2023-02-14

カーサブルータス(WEB)の余談

松本市内で現在開催中の「マツモト建築芸術祭2023」(〜2月26日)。

あをぐみöが取材した記事がウェブ版のカーサブルータスで見られるので、ぜひご覧ください。


記事では紹介していない“追記”を少々こちらにて。


各作家さんの作品が見どころなのはもちろんですが、その器たる建築そのものの解像度が、作品が入ることで高まること……それもこの芸術祭の真骨頂かと思いました。


たとえば、記事でもご紹介した〈割烹 松本館〉 。


その大広間は、何も展示されていなくてもしつらえだけで圧巻なのですが、福井江太郎のダチョウが入ったことで、天井の鶴までもが生命感をもって迫ってくる。鳥同士で呼び合っているんですかねえ。


展示とはカンケーないけど、1階には「節分」のディスプレイがされていて、それもまた楽しく目を引きました。季節感を大事にする料亭の心くばりが素敵です。


こちらはもともと洋裁店だった六九町の〈旧油三洋裁店〉で見られる、ヨーガン・アクセルバル + amachi.の展示。

廃墟同然だった建てものの解像度が展示でググッとあがり、止まっていた物語が息を吹き返したように思えます。


洋裁店だった頃の名残が、いい感じに展示内容とつながっているし。


こちらは記事では紹介していませんが、止まっていた物語が今とつながる例として、〈上土シネマ〉での河合政之さんの展示もいい。


写真は本人パフォーマンスのものですが、通常の展示では、2階のスクリーンに色と音だけの映像が延々と流れています。


作家本人の意図とは違うöの個人的見解ですが、ボーッと色だけの映像をみていると、この映画館が閉館までずっと流してきた歴代の映画が渾然と凝縮して流れているかのような錯覚にとらわれ、ちょっと感傷的にもなりました。


芸術祭の会期も半ばになってきました。

まだご覧になっていない方はぜひお出かけください。(ö)

2023-01-28

うらまち探検プロジェクト

去る2022年11月、松本城の東に位置する「裏町」でイベントがあり、そのフライヤーなどをあをぐみがデザインしました。



「裏町」。どこか怪しげなネーミングですが、さかのぼると江戸時代にはこのエリア、すでにこの名で呼ばれているのです。歴史を紐解くと長くなるので省略しますが、数年前まで飲み屋街だったこの街も、今やシャッター街。そんな裏町を盛りあげようと開かれたのが、今回のイベント「うらまち探検プロジェクト」です。


フライヤーをデザインするにあたって、イベントの内容はもちろんですが、かつての裏町、そしていまの裏町についてもリサーチ。界隈を昔から知るあをぐみ ö にもヒアリングしました。

その話しを聞きながら、頭のなかにある音楽が流れ出しました。シュガーベイブの「DOWN TOWN」……いや、「オレたちひょうきん族」のエンディング曲、というのが正しいですね。こどもの自分には、あの曲を聴くと土曜日が終わってしまうさびしさがありましたが、裏町がキラキラしていた当時、大人たちはこの曲が流れる頃「さあ、夜はこれから!」と、うきうき出かけていったんだろうな、と。


そんな裏町のキラキラ感を終わらせないと奮闘している大人たちによる、今回のイベント。大人の街だった裏町ですが、今は子どもたちや若者も一緒にうきうき出かける町を目指したいところ。それならこのイベントにどんな面構え(デザイン)を与えるべきか……など、あーだこーだ考えた結果、このチラシのデザインにたどり着きました。


さてイベント当日、プログラムのひとつだった「空きビル探検ツアー」が思いのほか人気で、物件を借りたいという本気の人から、昭和のスナックの雰囲気を見てみたいという人まで、たくさんの申込者が集まり、関係者も大喜びでした。これをきっかけに、街が少しずつドライブしていくといいなあと思います。(äwö)

2023-01-25

『さんかくで いえを つくろう』

 あをぐみがデザインを担当した『さんかくで いえを つくろう』(かがくのとも 2023年2月号 福音館書店刊)が発売中です。



「かがくのとも」や「こどものとも」……。こどものころから今に至るまで大事に手元に置いてあるのもあるほど、慣れ親しんだシリーズです。その絵本シリーズのデザインができるなんて! とても刺激的で、なにより感慨深くもありました。


著者は堀川 理万子さん。デザインに取り掛かる前にそのアトリエにお邪魔し、「さんかく」のつくり方を楽しく教わってきました(ちょっとネタ明かしをすると、この「さんかく」、新聞紙でつくるんです)。あをぐみ事務所に戻ってからも、せっせと「さんかく」で「いえ」をつくり、その感覚や気持ちがデザインに生きるように心がけました。


デザインについて話したいことは山ほどあるけど、なんだか野暮な気がしてきたのでやめます。ぜひ本書を手に取って、“読む”と“つくる”の両方を楽しんでいただければうれしいです。


余談ですが、著者の堀川さん、つい先日NHK Eテレの番組にご出演され、愛読してきた本についてお話しされていました。本と絵をしみじみ愛する堀川さんだからこそ、こういう絵本が生まれるんだなあ。(ä)

2022-11-11

もっと知りたいシャネルと20世紀モード

 あをぐみが編集とエディトリアルデザインを担当した『もっと知りたいシャネルと20世紀モード』(東京美術刊)が発売中です。





シャネルの生涯を追いながら、その作品はもちろん、同時代のデザイナーや交流のあった人物も取りあげ、20世紀モードを立体的に知ることのできる画期的な一冊となっています。


ファッションやメゾンとしてのシャネルが好きな人や商品の愛用者は、その源泉ガブリエルを知るための絶好の参考書にしていただけそう。そして、芸術から文学から音楽などなど、ありとあらゆる文化の天才たちが戯れる20世紀パリの一端を、ファッションというメガネから見る楽しみも。本書で才能同士の出会いを知るにつけ、天才はひとりで天才になるのではないと、つくづく。”天才スパイラル”みたいな渦にうまく巻き込まれることも必要なのかもしれません。


もっと身近に視点を戻せば、自らのファッションについても考える契機になるかも。洋服が、ただ寒さをしのいだり暑さを避けるだけのものであってはつまらない。かといって、誰かに見せる(見られる)ための”武装”だけでもシンドイ。自分自身を高みにあげつつ自然に生きるためのファッションのあり方についても、この本をデザインしながら思い知らされました。


三菱一号館美術館で「ガブリエル・シャネル展」が開催されるなど、クリエイターとしてのシャネルが大きく取り上げられる機会も多かった2022年。ファッションにフォーカスした展覧会は来年以降も目白押しなので、本書を読むかたわら、いろいろ足を運ぶともっと楽しめるかと思います。(äwö)

2022-11-06

イベント「昔の灯を体験しよう」

 東京都町田市にある人気の公園「町田薬師池公園四季彩の杜 西園」を舞台に、10月末から開催されているイベント「Park Fest 894 in 西園」。期間中はパフォーマンスやライブ、ワークショップと、楽しいプログラムが目白押しなのですが、最終日11月13日の1日オンリー、しかも黄昏時の17時から催されるユニークな企画が「昔の灯を体験しよう」です。

あをぐみは、このイベントのチラシをデザインしました。


地元出身、柳家小はぜさんの落語と、電気が普及する以前の時代に戻ったような灯りを体験できる、宵のイベント。大人はもちろん、小学1年生から楽しめる企画なので、お近くの方はぜひご家族で参加してみてください。

こんな素敵なイベント、ぜひ松本でもやってほしいなあ。そしたら落語家はあの人を呼びたい、、、いや、星新一&志ん朝・小三治の「星寄席」をかけるか、、、などと妄想がふくらみます。(äwö)

2022-11-05

ハナブサ・リュウ「肖像✦身体 -Portraits ✦ Bodies-」

写真家ハナブサ・リュウさんの作品展「肖像✦身体 -Portraits ✦ Bodies-」が、東京・新宿のニコンプラザ東京 THE GALLERY で11月14日まで開催されています。

ハナブサさんとあをぐみとは、別冊太陽の『パリ オルセー美術館』のデザインを担当させていただいたのが最初のご縁でした。このとき2006年。

続けて、同じ別冊太陽の『モネ 光と色の革命児』、『ルノワール 色の魔術師』とデザインを担当。当時フリーランスとしては駆け出しだった自分が、デザイナーとして信頼される責任や喜びをひしひしと実感したことを思い出します。

以上の3冊は、「写真家の目をとおして絵画や彫刻を観る」という、おもしろくも貴重な”体感”のできる本となりました。


あれから15年以上の時が経った今年、ひさしぶりにハナブサさんのお手伝いをさせていただく機会がありました。

それがニコンでの個展のDMとパネルワークです。


先日あをぐみも拝見してきましたが、被写体は蝋人形や彫刻なのに、人間の生々しさ……いや、なまめかしさが感じられる蠱惑的で魅力的な写真がずらりならび、圧巻でした。

新宿へお出かけの際には、ぜひニコンプラザ東京 THE GALLERY へお立ち寄りください。11月24日からはニコンプラザ大阪 THE GALLERYへ巡回しますので、お近くの方はぜひそちらへも。(ä)

2022-09-04

別冊太陽 絵本で学ぶSDGs

あをぐみがエディトリアルデザインを担当した『絵本で学ぶSDGs』(別冊太陽 日本のこころ 301/平凡社刊)が発売中です。



『五味太郎 みちはつづくよ……どこまでゆくの?』『科学絵本の世界100 学びをもっと楽しくする』と、絵本に関する特集を続けて担当し、あらためて絵本の魅力やパワーを思い知りました。そんなこともあり、コロナにふりまわされる世界になって以降、絵本ばかり読んでる気がします。


表紙や本文のイラストは小山友子さん。描かれた子たちといっしょに、ときに楽しく、ときには真剣に、SDGsを学んでいける一冊です。

SDGsは“ゴール”が17もあるうえ、そのゴール自体もいろんな条件でからみあっています。僕自身もデザインしながら「自分たちはなんて複雑な世界に生きてるんだ」と実感したかと思えば、「問題の本質や解決するための答えは、ホントは単純だったりするのかも」と逡巡したり。

項目が多くてわかりにくい側面もあるSDGsですが、同書はその理解にとても役立つガイドブックとしても使ってもらえる一冊になりました。


ところで、絵本の選書に携わった方々の多くは「絵本専門士」とのこと。この本をデザインしたことではじめて絵本専門士という職業を知りました。


絵本と聞くと、子どもたちのためのものと思い込みがちですが、世界をつくってる大半が大人たちですから、そう考えると、むしろ大人たちが読むべき絵本がたくさん紹介されていると言えるかもしれません。


さいごに個人的なことをひとつ。公共図書館の取り組み例としてコラムで取り上げられている塩尻市立図書館は、あをぐみもたびたび利用する、とても素敵な図書館です。自分がデザインする本で身近な場所が取り上げられるという、ふだんと違ったうれしさもありました。(ä)

2021-10-06

もっと知りたい柳宗悦と民藝運動

あをぐみが編集とエディトリアルデザインを担当した『もっと知りたい柳宗悦と民藝運動』(東京美術刊)が発売中です。



松本で暮らしていると「民藝」を身近に感じます。

何気なく街を歩いていても、民藝運動に影響を受けた店やその流れでつくられた家具・器などに出会う機会がとても多いのです。

クラフトフェアが松本に根付いているのも、「民藝」を身近に感じられる風土が少なからず関係あるのかもしれません。

(コロナの影響で2年間もフェアができていませんが、2022年は無事開催されることを楽しみに待ちます)

そんなふうに身近だと、ついつい知った気になってしまうものです。

でもこの本に携わったことで、「実のところ何も知らないに等しかった」と気付かされて、ちょっと反省。

と同時に、改めて自らの暮らしを見つめ直したり、物への愛情を高めるきっかけをもらえて、喜びも感じています。

この本は、民藝とその源流である柳宗悦という人物を知ることができる内容ですが、柳の歩みや民藝運動の解説だけでなく、多様なジャンルの手仕事など、図版も充実。

第2章では、彼に共鳴したり見出された作家たちの紹介もあり、読みごたえのある入門書となりました。

本が完成した後となってしまいましたが、先日、ひさしぶりに日本民藝館へ行ってきました。本書に掲載された品も多々展示されていて、何だか再会を喜ぶような心持ちになりました。

本には品物のサイズを掲載していますが、実物を見るとかなり大きく感じるなど、確認と再発見を楽しみながら、まじまじと拝見。「ほしい!」というものもたくさんありました。

10月26日からは、東京国立近代美術館で「柳宗悦没後60周年記念展 民藝の100年」が開催されます。

本書を片手に、日本民藝館をはじめとするゆかりの施設へ足を運んだり、長く日常を共にできる器や家具などを探しに出かけていただければうれしいです。(äwö)

2021-03-01

別冊太陽 科学絵本の世界100

 あをぐみがエディトリアルデザインを担当した『科学絵本の世界100 学びをもっと楽しくする』(別冊太陽 日本のこころ 286/平凡社刊)が、先月発行されました。


昨年デザインを担当した『別冊太陽 五味太郎』に続いて、奇しくも絵本関連の特集を担うことになり、コロナ禍のこの1年のあいだは、たくさんの絵本を読みふけりました。
ちなみにこの『科学絵本の世界100』でも、五味さんの作品が紹介されています。

コロナの影響か、自分がオジサンになったからなのか、こどものころはゲラゲラ笑って読んでいた本も、あらためて読み直すとなぜか泣けてしまったりと、いろいろな気持ちが込みあげてきます。読んだ本に勇気づけられたり励まされたり。そうやって心に不思議なエネルギーが渦巻くなか、いつもとはちょっと違うテンションでデザインする日々でした。

そうやってできた本書。画家で絵本作家の堀川理万子さんに描き下ろしていただいたキャラクターたちのおかげで、多種多様な「科学絵本」というジャンルにうまく統一感をもたせることができ、楽しい一冊に仕上がっています。

掲載の絵本は名作ばかりなので、これをガイドブックとして、気に入った科学絵本もあわせて手に取っていただければ、とてもうれしいです。(ä)

2021-02-22

あをぐみÖの読書日記「文学ムック ことばと VOL.1」

これまで文学誌やムックの類をほとんど読んでこなかったのだけど、たまには、と手に取ったのがこちら。去年の春に創刊したばかりだそうです。



新創刊するからには「既存にはないものを」という意図が込められているんだろうけれど、ウォッチャーではないのでそこはスルー。掲載されているものをフツーに受け取るだけでしたが、普段読み慣れないだけに、「文学ムックって中学校みたいだ」と思いました。要するに、自分で選んでいない人たちに囲まれるというか、ありとあらゆる人種が入り混じっている空間に放り込まれた気分がしたのです。
そこには気の合いそうなヤツもいれば、受け付け難いヤツもいる。偶然の出会い。ここから生涯の友が見つかるかもしれない。うん、小学校や高校とも違う、まさに中学校のクラスの感じ。

おもしろいのは、フツーの日常を書いているだけなのに、彼岸と此岸くらいの距離を感じる物語もあれば、全くの異世界や自分とはかけ離れた人物の話なのに、ものすごく近いものを感じる物語もあるということ。
いろいろな話が一緒くたになったムックだからこそ、違いが鮮明に迫ってきます。ビールを飲んだ直後に違うビールを飲むと、味の違いがより明確になる、というのと似てるかな(ちがうか?)。

美術ウォッチャーのÖとしては、福田尚代さんの見事な回文が冒頭に載っていたのが嬉しかった。これほんと、アートです。ムックでのこの作品の肩書き(?)が「表現」となっていたことに、ある種の感動を覚えました。

ムックとか文芸誌、たまには読んでみるものですね。大人になると新しい友人がつくりづらいといいますが、好きな人とだけ付き合っていないで、たまには「蓋を開けるまでわからん」という場に行ってみるのも新鮮。新たな出会いを得て、my 読書生活がイキイキしてきました。
あ、このムック、もう vol.2 が出てるみたいです。(ö)

文学ムック『ことばと』vol.1
発行:書肆侃侃房
編集長:佐々木敦

2021-02-10

ミヒャエル・ボレマンス マーク・マンダース|ダブル・サイレンス@金沢21世紀美術館

 タイトルのとおり2人の美術家による展覧会ですが、これまで一緒にやってきたとかコラボの機会が多かったわけではなく、意外にも接点はないんだそうで……ではなぜこの組み合わせ? オランダとベルギーで出身国も違うし、主に彫刻で表現するマンダースと、絵画のボレマンスとではメディアも違う。ふーむ。。


ともあれ、この展覧会のだいぶ以前から、ボレマンスファンのあをぐみÖ。実はパソコンの壁紙は彼の絵画なのです。ふふ。そういうわけでその作品が見られる機会を見逃すまいと、早速GO!



以下すべて主催者の許可を得て撮影しています。

 美術館の人の話では、コロナの影響で2人とも訪日がかなわず、オンラインによる指示で展覧会準備を進めたそう。あれだけの広い会場を、「この作品はもう少しこちらに向けて」とかパソコン越しにやりとりするのって……作家も美術館スタッフも、相当シンドかっただろうなあ。

 マンダース彫刻の置かれた床に砂のようなものが落ちていて、「壊れちゃった?」と一瞬焦るのですが、実はこれも作品の一部(写真では見づらいと思いますが)。この散らばしかたもマンダースのオンラインによる指示(「もう少し広い範囲にばら撒いてね」みたいな感じ)で、美術館スタッフが再現したものなんだって。ひゃー。



それにしても、2人の作品はどちらもイメージは強烈なのに(例えば、ピンクのドレスで着飾った女性が真っ黒く顔を塗られていたり(=ボレマンス)、女性の頭頂に楔のような板が打ち込まれていたり(=マンダース)など)、その激しさに反比例するような静けさや、時が凍ったような感覚を生じさせます。それら個々の作品が出す無音のバイブレーションが不思議に共鳴している気がしたので、意識してその”共鳴・呼応”に耳を澄ませてみることにしました。

 そのうち、作品同士は何を語り合っている?とか、なぜ「ダブル・サイレンス」なの?という問いや想像は、いつしか内面に向かい、自分と対峙する静かな時間に。会場を出る頃には何だか清々しい気分になってて、あ〜、わたし、こういう時間を必要としていたんだなあ、としみじみ。



そうそう、この展覧会に合わせたのかは不明ですが、3月から東京都現代美術館でマンダースの国内初個展が行われます。行かなきゃ!(ö)

展覧会情報はこちら

会期:~2/28
休:月曜
観覧料:当日一般¥1,000ほか