2020-06-18

福島県観光物産館:久保修さんのお土産袋

新型コロナウイルスの影響で、仕上げたもののなかなか発表できないでいた福島県観光物産館のお土産袋たち。終息のきざしがみえた去る6月12日、ようやく使用スタートになりました。感慨無量です。

以前のブログでもご紹介した、切り絵画家の久保修さん。作品集『久保修 切り絵画家の半生』(淡交社刊)のデザインをあをぐみが担当したご縁で、福島県観光物産館のお土産袋のデザインも、引き続きお手伝いさせていただきました。






紙袋6種類、ビニール袋9種類、包装紙の全16種類……こうしてみるとけっこうなボリュームですね。福島県の地域にちなんで制作された久保さんの切り絵7作を組み合わせながら、最適のかたちでデザインしていきました。地元の新聞「福島民報」にデザインモチーフが詳しく掲載されたので、そちらもぜひご覧ください。

お土産を買う楽しみに加え、買ったお土産のサイズに合わせ、久保さんの作品を集める楽しみも生まれるようにと、できるだけデザインが重複しないようにしてあります。
とっておきたくなるような袋をデザインすることが、結果的に資源を無駄にしないことにつながるんじゃないかなあと願いつつ。



福島県観光物産館にはしばらくの間、久保さんの作品が展示されているため、訪れる楽しみがあります。全国的に言えることですが、自粛要請によって観光業界はかなりのダメージを受けているので、この久保さんの紙袋が福島の観光を盛りあげることにつながるとうれしいです。(ä)

2020-06-03

あをぐみÖの読書日記「皮膚と心」

 いい齢をして「とびひ」に感染。肩から背中にかけて赤黒いテンテンボチボチが踊り、草間彌生さんもびっくりの「水玉脅迫」ぶり。コロナの不穏が、こういうカタチで出てきたか、あーあ。

 こうなったらあれを読むしかない! と思って引っ張り出してきたのが太宰治でありました。その名も「皮膚と心」。皮膚病をわずらっちゃった女性の独白調による短編です。

 まあ、なんと言うか甘い。「おぬし、甘いのう」の「甘い」ではなく、スウィートな甘さです。恋に恋すると同様に、悩みに恋する女性のとめどなく流れる感情の渦。苦悩に淫している感じが甘さを醸します。「皮膚病を患った女」という意味では主人公と同じ立場ですが、まあ、なんと言うかわたしとは十億光年くらいの距離感がある、心理的に。……と一瞬思ったものの、感情の内容はともかく、何か非日常的(ネガティブ)なことに出くわし、くよくよと感情の渦に飲み込まれていくのは、実は同じかもしれない。

 主人公の場合、その感情が「女であることの因果」みたいなところにまでどっぷり堕ちていきます。その極みが、終わりの方で発射される「プロステチウト」発言。でたな、カタカナ一言爆弾。『三四郎』におけるストレイシープ(これも女性(みねこ)の発言ですね)同様、くさびのように心に撃ち込まれる威力のある単語です(意味は。。。調べてみてください)。どんな”おたふくのおばあさん”(主人公、28歳なんですけどね)でも、女は女。醜い皮膚病は、唯一のよすがを奪われる残酷な仕打ち。残った道は堕落か自殺か、というところまで思考が進みます。「健全な体に健全な魂」というけれど、逆も真なり、なのかも。ため息。
 ネガティブに陥る自分を客観的に見せてもらった気がして、正気に戻るきっかけをつかみました。おかげさまで。やはり本は効くなあ。

 ところで、女性の苦悩とは全く別の次元で、今回この短編を身近に思えた発見がひとつ。主人公の夫がデザイナーなんですよ。そうだったっけ? 昔読んだ時にはスルーしてました。とても気に入っていた図案を、まさか自分の夫が手がけていたとは、と気づいたときの女性の描写。このあたりに今回はキュンときました。はは。

 ちなみにこの短編、新潮文庫の短編集『きりぎりす』に収録されています。写真はかつてあをぐみがデザインした「別冊太陽 太宰治」。
ああ、もうすぐ桜桃忌ですね。(ö)