2020-05-11

あをぐみÖの読書日記

COVIC-19のせいで時間ができたのを機に、読書な日々。

もともとこもり気味の生活を送っているため、パンデミック下で様相が大きく変わったりはしてないのですが、漠然とした不自由や重い空気に包まれ、真綿で首を絞められているような今日この頃。
そこで、この本を読んでみた。自分の不安を他人の不安で上塗りしてやろうというわけです。毒を持って毒を制す的な?

不安の書【増補版】
Livro do Desassossego
発行:彩流社
著者:フェルナンド・ペソア
訳者:高橋 都彦


前情報なくタイトルと装丁で選んだ一冊ですが、これがまあ、今の空気感にぴったりそぐう一冊で、我ながら選書力の高さに苦笑。
情報によれば、ポルトガルの詩人・ペソア最大の傑作とされる『不安の書』の完訳であり、”待望の復刊!”とのこと。日記のようにも、創作のようにも、詩のようにも感じられる不定の断章で構成されています。

読みはじめてすぐ、「よくもここまで不安にかられ”られる”ものだ」と感心。日記のようではあるけれども、飽きもせず毎日ぼやき、つぶやき、うめき、世を呪う。……そういう断片が延々と続く(結構分厚く、600ページ超)わけで、早々に投げ出したくなりそうになったのだけど、そこはさすが詩人。漠然とした不安をつぶやくために操る言葉の数々は見事に多彩で、それがまた逆に呆れるというか……。
読めば読むほど訳者の根気とご苦労が思われ、高く尊敬の念を抱きます、マジで。

で、気付いたのですが、この本に正しい読み方があるとすれば、気が向いた時にパッと開いたページを”啓示”として受け取ることかも。「今日の星占い」的な感じで読む、「今日の不安」。そう思うといろいろな言葉(不安)との出会いが断然楽しくなる。

以下、2、3の短いフレーズを抜粋。

わたしは道徳を守りつつも善いことをしないが、わたしに善いことをしてくれとも要求しない。
(共感~!)

わたしの理想はすべてを小説で体験し、実生活で休息する。 
(これも共感。バーチャルに生きる幸せと閉塞)

支配するには感性に欠けている必要がある。
(例として挙げられているのは政治家、司令官のほか、美しい女性。。。こういうユーモアは、ペソアの武器のひとつだと思う)

今後もそのやりかたで、この分厚い一冊を、パンデミック収束までの羅針盤として活用していきたいと思います。どんな珠玉のぼやきに出会えるかしら、ワクワク。毒はやはり毒に効くらしい。(Ö)