2021-01-16

あをぐみÖの読書日記「むらさきのスカートの女」

コロナ大爆発の昨今。またもや引きこもっての読書生活がはじまっています。で、読んだのが2019年の芥川賞を獲った、今村夏子さんの著書。掲載は表題作のみなので、まあまあ長いお話です。


最初は「むらさきのスカート」「黄色のカーディガン」は何のメタファー??と、いちいち立ち止まりながら読んでいたけれど、書かれたものを文字どおり受け取るべしという結論に早々に至りました。文体も言葉も平易でとにかく読みやすいから、自ら立ち止まらなければストーリーはスイスイと流れていきます。

が、軽く読めてしまう割には謎が多すぎ。わたくしは途中まで、物語の主人公(語り手)は「監視カメラの向こうの人」かなと思ったりしてましたもん(村上春樹『アフターダーク』的な感じ)。読み進めていくと苗字が出てくるので「人だった」とわかるのですが、それでもしばらく読むと、やっぱり”見えない複数の存在”なんじゃないか、などと疑ったりしてしまう。

だって、一人の人間に常につきまとってもバレない・看破られないなんて、フツー無理だもの。街中に仕掛けられた監視カメラが主人公(語り手)と言われた方がしっくりくるほど、主人公は「むらさきのスカートの女」にひたすら迫る。ところどころ「ユーモア?」と思えるシーンもあるけど、それがいっそう、人間が人間につきまとうことの怖さを際立たせます。

そして、読んでいるうちにどんどん作家が心配になってくる。病みの度合いがズーンと深いのです。簡単には救い出せないところにいて、誰の手も届かないのではないかと不安になってしまいました。作家は違うけど、以前『コンビニ人間』(村田沙耶香・著)を読んだ時も似たような不安に陥りましたが、これもまたそれと同等。いやむしろ、より深いぞ、病み(闇ではない)が。

前に同じ今村さんの『星の子』(映画にもなりましたね)を読んだときは、ここまでの病みを感じなかったけど、それは主人公はともかく、その両親が変という構図だったからかも。今回のは主人公の深度がすごい。

……この物語は果たして恋愛? 観察日記? 狂気?


『むらさきのスカートの女』
著者:今村夏子
発行:朝日新聞出版
第161回芥川賞受賞作

2021-01-06

10年めー

新年が明けて1週間近く経ちました。

「おめでとうございま〜す!」と素直に寿げない事態となり、悶々とした年明けとなってしまいました。ワクチンが行き渡り、コロナが終息するのは2〜3年後ではないかと思うと……はあ、気が重くなります。

と、こんな出だしでなんですが、あをぐみはこの2021年で創立10年目に入りました。

東京・港区で蒔いたタネは長野県・松本で育ち、どうにかこうにか10年。できたこととできなかったこといろいろひっくるめて、もう10年、です。

これは常套句でもなんでもなく、本当に素直に「みなさんのおかげ」で今ここにいられるわけで、ご縁に深く深く感謝しております。ありがとうございます。この場をお借りし、深く深く感謝。

とにもかくにもあをぐみは次の10年に踏み出したので、コロナだからといって落ち込んでばかりはいられません。これからも華麗に暴走していきたいと、気持ちを新たにしています(お、ようやく新年らしい雰囲気になってきました)。

見ててね〜!(äwö)