「ゆめはなんですか」。
学校での面談とか就活中の面接とかで出てくるキラークエスチョン。聞かれるだろうなあと思って用意する答えは、つまらないくらい優等生的になりがちで、かといって不意に問われた場合はホントしょうもないこと言って照れる、或いは激しい後悔に陥りがち。そして年寄りにもなると、問われること自体を皮肉に感じてしまう……キラキラした目でこの疑問に答えられるのは、前途漠たる若者だけだわ。いずれに転んでも、いいことはないわけです。
が、年をとっても”ゆめ”というワードにグッとくることもあるのね。この人の写真を見ていると特にそう思う。アレックス・ソスです。
さまざまなシリーズがあるものの、彼の主な被写体は総じて人とインテリア。人がいる室内もあれば不在の室内もあるけれど、誰もいない室内にこそ強烈に”人”を感じてしまうのは、ソス氏がそれを”ポートレート”として撮影しているからだろう。加えてそこには”ゆめ”も写っている。
初期作品に写る「ゆめ」は、ちょっと人里離れていた。ファンタジーに近いのかもしれないけれど、ゆめ見る当人がその界に閉じこもっていて、ちっとも里に戻ってこないような気配。
例えば開催中の個展にも展示されている、クリスタルさん。彼女は見たところ明らかに、現実世界だけじゃないアナザ・ワールドにも居場所をもっていて、そのことが写真にたっぷり滲み出ている。その独自のゆめ世界は彼女自身にとって安らぎの地であろうが、現実世界の人々の住む里からは遠いかもしれない。そんな不穏がよぎる。
アレック・ソス 展展示風景。手前が《Crystal, Easter, New Orleans, Louisiana》(〈Sleeping by the Mississippi〉より 2002年 作家蔵 ⓒAlec Soth)
他方で、新作シリーズに写る”ゆめ”はまさに、希望とか理想とか、ポジティブな味で満たされている。被写体の多くが、写真とか芸術表現を学ぶ学生だもの。
図録より 《Amelia》〈Advice for Young Artists〉より 2023年 作家蔵 ⓒAlec Soth
「ゆめはなんですか?」……展覧会を見た後にもういちど自分に問いかけてみる。さて、わたしのゆめはなんであり、どこにあるのかしら? (ö)
アレック・ソスさん。
◆開催概要
開催中~2025.1.19(日)
東京都写真美術館 2F展示室