これまで文学誌やムックの類をほとんど読んでこなかったのだけど、たまには、と手に取ったのがこちら。去年の春に創刊したばかりだそうです。
新創刊するからには「既存にはないものを」という意図が込められているんだろうけれど、ウォッチャーではないのでそこはスルー。掲載されているものをフツーに受け取るだけでしたが、普段読み慣れないだけに、「文学ムックって中学校みたいだ」と思いました。要するに、自分で選んでいない人たちに囲まれるというか、ありとあらゆる人種が入り混じっている空間に放り込まれた気分がしたのです。
そこには気の合いそうなヤツもいれば、受け付け難いヤツもいる。偶然の出会い。ここから生涯の友が見つかるかもしれない。うん、小学校や高校とも違う、まさに中学校のクラスの感じ。
おもしろいのは、フツーの日常を書いているだけなのに、彼岸と此岸くらいの距離を感じる物語もあれば、全くの異世界や自分とはかけ離れた人物の話なのに、ものすごく近いものを感じる物語もあるということ。
いろいろな話が一緒くたになったムックだからこそ、違いが鮮明に迫ってきます。ビールを飲んだ直後に違うビールを飲むと、味の違いがより明確になる、というのと似てるかな(ちがうか?)。
美術ウォッチャーのÖとしては、福田尚代さんの見事な回文が冒頭に載っていたのが嬉しかった。これほんと、アートです。ムックでのこの作品の肩書き(?)が「表現」となっていたことに、ある種の感動を覚えました。
ムックとか文芸誌、たまには読んでみるものですね。大人になると新しい友人がつくりづらいといいますが、好きな人とだけ付き合っていないで、たまには「蓋を開けるまでわからん」という場に行ってみるのも新鮮。新たな出会いを得て、my 読書生活がイキイキしてきました。
あ、このムック、もう vol.2 が出てるみたいです。(ö)
文学ムック『ことばと』vol.1
発行:書肆侃侃房
編集長:佐々木敦